営業に絶対はないが、週報にはセオリーがある。
営業週報とは、営業活動の成果を可視化し、次の行動につなげるための重要なツールです。営業という仕事は相手がある以上絶対はありませんが、週報を通じて自分の活動を振り返り、改善を重ねることで、狙った方向に商談を進める力を身につけることができます。
多くの営業担当者が「何を書けばいいかわからない」と悩む週報ですが、適切なセオリーを身につけることで、上司から評価され、自身の成長にもつながる武器に変えることができます。
本記事では、営業現場で実際に結果を出している効果的な週報テンプレートと、評価される書き方のセオリーを実践的に解説します。
週報書くことがない人向けテンプレート
経験レベルに応じた最適なテンプレートをご紹介します。どのテンプレートも、営業活動の本質である「相手が求めているものを明らかにし、気づかせ、価値をすり合わせる」プロセスを意識した構成になっています。
シンプルテンプレート
営業経験が浅い方や、週報に慣れていない方におすすめの基本形です。
【週報】○月○週目 氏名:○○○○
■今週の営業活動(目安:100-150文字)
・月曜日:
・火曜日:
・水曜日:
・木曜日:
・金曜日:
・その他:
■今週の成果・実績(目安:50-100文字)
・受注実績:
・商談進展:
・新規獲得:
■来週の重要予定(目安:50-100文字)
・月曜日:
・火曜日:
・水曜日:
・木曜日:
・金曜日:
■今週の気づき・インサイト
・顧客の反応から学んだこと:
・改善すべき点:
・次週実践したいこと:
記載例:
【週報】3月第2週 氏名:田中太郎
■今週の営業活動
・月曜日:A社(製造業)訪問、システム導入の課題を深掘りヒアリング
・火曜日:B社電話フォロー、見積書への技術的質問に対応
・水曜日:C社プレゼン実施、決裁者含む3名が参加、導入効果を数値で提示
・木曜日:新規開拓リスト作成、業界課題を研究し5社へアプローチ
・金曜日:D社最終商談、ROI重視の提案で価格調整を実施
■今週の成果・実績
・受注実績:E社システム導入案件(300万円)契約締結
・商談進展:C社案件、来週最終回答予定(受注確度80%)
・新規獲得:F社、G社からアポイント獲得(来週訪問予定)
■来週の重要予定
・月曜日:F社初回訪問(14:00-15:00)課題ヒアリング中心
・火曜日:C社最終回答確認、追加条件があれば即日対応
・水曜日:G社課題ヒアリング(10:00-11:00)競合状況も確認
・木曜日:チーム会議、月次実績報告とベストプラクティス共有
・金曜日:H社フォローアップ訪問、導入後の効果測定
■今週の気づき・インサイト
・顧客の反応から学んだこと:決裁者は導入効果を数値で判断する傾向
・改善すべき点:初回訪問時の課題ヒアリングをより体系的に
・次週実践したいこと:ROI計算シートを活用した提案手法
営業向けテンプレート
営業活動に慣れた担当者向けの、数値管理と戦略的思考を重視したテンプレートです。
【営業週報】○月○週目 氏名:○○○○
■売上実績・進捗状況
・今週受注額:○○万円
・月間累計:○○万円(目標○○万円に対し○○% ±○○万円)
・四半期累計:○○万円(目標○○万円に対し○○%)
■注力案件の進捗管理
・案件名:
・顧客名:
・予想受注額:○○万円
・進捗段階:
・受注確度:○○%
・顧客の求める価値:
・次回アクション:
・期限:○/○
■営業活動実績
・訪問件数:○件(新規○件、既存○件)
・商談件数:○件
・提案書作成:○件
・見積書提出:○件
■新規開拓活動と成果
・リストアップ:○社
・アプローチ:○社(電話○件、メール○件、訪問○件)
・アポイント獲得:○件(獲得率○○%)
・成功要因:
・改善点:
■今週発見した顧客インサイト
・業界トレンド:
・顧客の潜在ニーズ:
・競合動向:
・活用方法:
■今週の課題と来週の改善アクション
・課題:
・根本原因分析:
・改善策:
・実行計画:
・成功指標:
■来週の重点活動
【最優先】
・
【重要】
・
【新規開拓】
・
新人向けテンプレート
入社1年目の方におすすめの、学習要素を取り入れたテンプレートです。
【新人営業週報】○月○週目 氏名:○○○○ 入社○ヶ月目
■今週の営業活動記録
・同行訪問:○件(同行者:○○さん)
└学んだポイント:
・単独訪問:○件
└実践したこと:
・電話営業:○件(アポ獲得○件)
・資料作成:○件(提案書○件、見積書○件)
■今週学んだこと・新しい発見
【商品知識】
・
【営業スキル】
・
【業界知識】
・
【顧客理解】
・
■実践したアドバイス
・誰からのアドバイス:
・アドバイス内容:
・実践結果:
・気づいたこと:
■うまくいったこと(成功体験)
・どんな場面で:
・何をしたか:
・なぜうまくいったと思うか:
・再現できそうなポイント:
■困ったこと・うまくいかなかったこと
・困った場面:
・何が原因だったか:
・どう対処したか:
・今後の改善策:
■顧客から学んだインサイト
・顧客の本当の課題:
・気づいた業界の特徴:
・有効だったアプローチ:
■質問・相談したいこと
【商品について】
・
【営業手法について】
・
【お客様対応について】
・
【その他】
・
■来週の学習目標・挑戦したいこと
・学習目標:
・挑戦したいこと:
・必要なサポート:
■振り返り(今週の成長実感)
・できるようになったこと:
・まだ課題だと感じること:
・来週重点的に取り組みたいこと:
管理者向けテンプレート
チームリーダーや主任クラス向けの、マネジメント要素を含むテンプレートです。
【管理職週報】○月○週目 氏名:○○○○ チーム:○○営業部
■チーム実績サマリー
・チーム売上実績:○○万円(目標○○万円 達成率○○%)
・個人別実績:
- ○○さん:○○万円(目標比○○%)特記事項:
・重要案件進捗(1000万円以上):
- 案件名/担当者/進捗状況/リスク要因
■部下指導・育成状況
【今週実施した指導】
・対象者:
・指導内容:
・指導方法:(同行/面談/OJT/研修など)
・効果・反応:
・継続フォロー予定:
【課題のあるメンバーへの対応】
・メンバー名:
・課題内容:
・今週の対応:
・改善状況:
・来週の対応計画:
■チーム営業力向上施策
【発見した課題】
・営業プロセス面:
・スキル面:
・モチベーション面:
・環境・制度面:
【実施した改善策】
・内容:
・対象:
・効果:
【チーム内で共有した成功事例・インサイト】
・事例内容:
・学習ポイント:
・横展開方法:
■個人営業活動(管理業務以外)
・担当案件数:○件(総額○○万円)
・今週の重要商談:
・受注実績:
・発見した顧客インサイト:
■上位管理者への報告・相談事項
【報告事項】
・
【相談事項】
・
【支援要請】
・
■来週の重点マネジメント活動
・最優先課題:
・個別フォロー予定:
・チーム施策:
・自己営業活動:
週報の構成と記入例
効果的な週報は、営業活動の全体像を俯瞰しながら、次の行動につながる内容で構成されています。ここでは各項目の書き方のポイントと具体例をご紹介します。
計画と目標
週報の冒頭では、今週の計画に対する実績を明確に示します。計画と実績を対比することで、営業活動の精度と改善点が見えてきます。
記載例:
■今週の計画と実績
【計画】新規開拓5社、既存フォロー3社、提案書作成2件
【実績】新規開拓7社、既存フォロー3社、提案書作成1件
【差異分析】新規開拓は計画超過達成。提案書作成が遅延(C社要件変更のため)
業務内容
日別の活動内容を具体的に記載します。単なる事実の羅列ではなく、顧客の反応や発見した課題も含めることで、価値ある情報共有につながります。
記載例:
■今週の営業活動詳細
・月曜日:A社再訪問、導入スケジュール詳細確認。4月導入希望と判明
・火曜日:B社初回訪問、人事システム課題をヒアリング。競合2社も検討中
・水曜日:C社要件定義、当初想定より規模大(+50%)、提案内容見直し必要
・木曜日:新規開拓電話営業15件、アポ獲得3件(獲得率20%)
・金曜日:D社最終プレゼン、技術的質問多数。来週火曜日に最終回答予定
成果・報告事項
今週の具体的な成果を数値とともに報告します。成果の背景にある顧客インサイトも併記することで、再現性のある成功パターンを蓄積できます。
記載例:
■今週の成果・実績
・受注実績:E社基幹システム更新(800万円)契約締結
・商談進展:A社案件、導入時期確定により受注確度60%→85%に向上
・新規獲得:F社、G社、H社から初回面談のアポイント獲得
・成功要因:E社では「業務効率化20%向上」の数値提示が決め手となった
・顧客インサイト:製造業では4月新年度に合わせたシステム導入ニーズが高い
今後の課題や目標
現在直面している課題と、その解決に向けた具体的なアクションプランを記載します。課題を明確にすることで、上司からの適切な指導を受けやすくなります。
記載例:
■今週の課題と改善策
【課題1】新規アポイント獲得率が低迷(15件中3件、20%)
・原因分析:アプローチ時の価値提案が弱く、相手の関心を引けていない
・改善策:業界特有の課題を事前研究し、課題解決型のアプローチに変更
・実行予定:来週の新規開拓10社で実践、獲得率30%以上を目指す
【課題2】提案書作成に時間がかかりすぎる(1件あたり8時間)
・原因分析:テンプレート活用が不十分、毎回ゼロから作成している
・改善策:業種別テンプレートを整備し、作成時間を半減させる
・実行予定:今週末にテンプレート3種類を作成、来週から活用開始
来週の予定
来週の重要な予定を優先度とともに整理します。計画的な営業活動を行うための指針となります。
記載例:
■来週の重点活動予定
【最優先】
・火曜日:D社最終回答確認と契約手続き(受注確度85%、1,200万円)
・水曜日:A社役員プレゼン(部長、常務が参加予定)
【重要】
・月曜日:F社初回訪問、課題ヒアリングと関係構築
・木曜日:C社要件変更後の改訂提案書提出
・金曜日:G社、H社への初回訪問(新規開拓)
【継続フォロー】
・B社競合状況確認、差別化ポイントの明確化
・E社導入後フォロー、追加ニーズの探索
簡単に評価される週報の書き方
週報で高い評価を得るためには、単なる業務報告を超えた戦略的な視点と継続的な改善姿勢が重要です。上司から「この人の週報は読み応えがある」と思われる週報を作成するためのポイントを、実践的な手法とともに解説します。
書く前に週報の目的を再度確認を実施する
週報を書き始める前に、その目的を明確にしましょう。目的が曖昧だと、何を書けばいいかわからず、形式的な報告書になってしまいます。
週報の主な目的:
- 営業活動の振り返りと再現性の構築
- 上司との認識共有と適切な指導の獲得
- 営業インサイトの発見と蓄積
- チーム全体の営業力向上への貢献
これらの目的を明確に把握することで、週報作成時の迷いがなくなり、書くべき内容が自然と整理されます。また、上司や同僚との建設的なコミュニケーションが生まれ、営業スキルの向上が加速します。
目的に合ったテンプレートを活用する
自分の経験レベルと組織の目的に合ったテンプレートを選択し、継続的に活用しましょう。一貫したフォーマットを使うことで、振り返りの精度が向上し、成長の軌跡を追跡できます。
テンプレート選択の指針:
- 新人(入社1年未満):学習重視テンプレートで成長を記録
- 中堅(経験2-5年):営業特化テンプレートで戦略的思考を養成
- ベテラン(経験5年以上):シンプルテンプレートで効率的に情報共有
- 管理職:チーム管理テンプレートでマネジメント力を発揮
自分のレベルに適したテンプレートを選ぶことで、週報作成の負担を軽減しながら最大の効果を得られます。継続的な使用により、振り返りの質が向上し、営業成果の向上につながる具体的な改善点が見えてきます。
数字を活用して定量定性で振り返りを実施する
感覚的な表現ではなく、具体的な数値を使って営業活動を報告しましょう。数値化することで改善点が明確になり、再現性のある営業活動につながります。
定量評価の例:
・訪問件数:12件(新規7件、既存5件)
・商談件数:8件(うち提案段階4件)
・アポイント獲得率:25%(20件中5件)
・受注確度:A社85%、B社60%、C社40%
・平均商談時間:90分
定性評価の例:
・顧客の反応から学んだこと:決裁者は投資対効果を重視する傾向
・業界インサイト:製造業は安定稼働を最優先、段階的導入を好む
・成功要因:事前の企業研究により、業界課題に沿った提案ができた
・改善点:技術的質問への回答精度を上げる必要がある
運用の目的とポイント
組織として週報制度を効果的に運用するためには、明確な目的設定と継続的な改善が不可欠です。週報が形式的な作業に陥らず、真に営業力向上に貢献するツールとして機能させるための重要なポイントを解説します。
運用前に週報の目的を再度確認を実施する
週報制度を導入する前に、組織として何を目指すのかを明確にし、メンバー全員でその価値を共有しましょう。目的が不明確だと、形式的な作業になってしまい、本来の効果を発揮できません。
組織としての週報活用目的:
- 営業活動の可視化:メンバーの活動状況と成果要因を把握
- ナレッジ共有:成功事例とインサイトをチーム全体で共有
- 人材育成:個別指導の質を向上させ、営業スキルを底上げ
- 組織学習:チーム全体の営業力を継続的に向上
目的に合わせたテンプレートを用意する
組織の目的と各メンバーのレベルに応じて、最適なテンプレートを用意します。画一的なフォーマットではなく、個人の成長段階に合わせたテンプレートを提供することで、週報の質が向上します。
レベル別テンプレート配布例:
- 新入社員:学習重視テンプレート(成長記録重視)
- 中堅社員:営業特化テンプレート(戦略思考重視)
- ベテラン社員:シンプルテンプレート(効率的情報共有)
- 管理職:チーム管理テンプレート(マネジメント視点)
週報を使ってフィードバックを実施する
週報は書いて終わりではありません。上司からの適切なフィードバックがあってこそ、真の価値を発揮します。営業組織に伴走する姿勢で、建設的な対話を心がけましょう。
効果的なフィードバック例:
■C社受注についてのフィードバック
おめでとうございます!決め手となった「業務効率化20%向上」の数値提示は
素晴らしいアプローチでした。このROI重視の提案手法は他の案件でも有効
だと思います。特にD社とE社は同じ製造業なので、同様のアプローチが
期待できそうですね。来週の訪問で試してみてはいかがでしょうか。
■新規開拓の課題についての支援提案
アポイント獲得率20%の課題、一緒に改善策を考えましょう。
業界研究の時間を30分に延長する案は良いですね。加えて、
初回アプローチ時の話法も見直してみませんか?来週の新規開拓前に
ロールプレイングで練習してみましょう。まとめ
まとめ
営業週報は、正しく活用すれば営業担当者の成長を加速させ、組織全体の営業力を向上させる強力なツールです。
重要なのは以下の3つのセオリーです:
- 自分のレベルに合ったテンプレートを選び、継続的に活用する
- 数字とストーリー、顧客インサイトで具体的に記述する
- 振り返りと改善を習慣化し、再現性のある営業活動を構築する
営業という仕事に絶対はありませんが、週報を通じて自分の営業活動を客観視し、継続的に改善していくことで、必ず営業成績の向上につながるでしょう。そして、その過程で発見した顧客インサイトや成功パターンは、あなただけの貴重な営業資産となります。
「チャンスは充分に準備した人の許に訪れる。」ールイ・パストゥール
営業週報も同じです。日々の準備と振り返りを怠らず、営業という仕事に誇りを持って取り組む営業担当者にこそ、大きな成果が訪れるのです。

早稲田大学卒業後、コンサルティングファームを経て、
株式会社Sales and Innovation Japanにジョイン。
大手スキマバイトアプリの営業支援や、ITシステム事業の新規事業立ち上げに従事。
現在、エンタープライズ企業向けコミュニティ“EIN”の立ち上げに奮闘。