「現場は日々忙しく動いているが、売上が伴わない」「残業が常態化し、優秀な人材が疲弊している」。多くの営業責任者が、こうした「効率」に関する深刻な悩みを抱えています。
良かれと思って指示した日報が「報告のための作業」となり、いつしか「頑張っているのに成果が出ない」状態に陥っていませんか?
本記事では、その根本原因を解消し、あなたの組織の「ムダな時間」を「確実な成果」へと変えるための具体的なロードマップを、明日から使えるテクニックと共に解説します。

「なぜウチの営業は忙しいのか?」 非効率を生む3つの根本原因
熱心に活動しても成果が上がらない背景には、組織の構造的な「非効率」を生む「ワナ」があります。これらを客観的に認識することが、成果を出すための重要な第一歩です。
ここでは、多くの営業組織が見過ごしがちな3つの代表的な根本原因を解説します。
- 原因①:「情報の属人化」:担当者しか案件進捗を知らない
- 原因②:「プロセスの非標準化」:資料作成や見積もりがバラバラ
- 原因③:「ノンコア業務の肥大化」:報告書や会議に時間を奪われる
原因①「情報の属人化」:担当者しか案件進捗を知らない
営業組織における「属人化」は、多くの責任者が頭を抱える共通の悩みです。実際、企業の経営者・役員を対象とした調査では、約8割(79.8%)が「営業担当者の成果が属人化している」と回答しています。
情報の属人化とは、特定の案件の進捗や顧客との重要なやり取りが、担当者の頭の中や個人の管理ファイル(Excelなど)にしか存在しない状態を指します。この状態は、組織にとって「見えないリスク」そのものです。
具体的にどのような問題を引き起こすのか、以下の表に整理します。
| 問題点 | 具体的な弊害(組織への影響) |
|---|---|
| マネジメントコストの増大 | 責任者は「あの案件どうなった?」と都度確認する必要があり、双方の時間を奪う。 |
| ブラックボックス化のリスク | 担当者の不在時や休職・退職時に、顧客情報や案件進捗が組織から失われる。 |
| ノウハウの非蓄積 | 成功・失敗事例が組織で共有されず、個人の感覚に依存した営業が続く。 |
表に示した通り、属人化は単なる「情報共有不足」ではなく、マネジメントの非効率化や組織力の低下に直結する深刻な課題です。
Excelでの個人管理を容認していると、「担当者しか最新版を知らない」という状況が生まれ、この属人化を強力に助長する温床となりがちです。
参考:「『営業マン成果の属人化』に関する実態調査」株式会社コミクス
原因②「プロセスの非標準化」:資料作成や見積もりがバラバラ
急成長している企業の72.1%が営業組織の運営に「深刻な課題」を感じており、その具体的な課題として45.3%が「業務プロセスの体系化が出来ていない」(=非標準化)ことを挙げています。
営業プロセスが標準化されていない組織では、品質のばらつきと業務の非効率が必ず発生します。これは、営業担当者ごとに業務の進め方や使用する資料が異なっている状態を指します。具体的には、以下の表のような問題が起こります。
| 問題点 | 具体的な弊害(組織への影響) |
|---|---|
| 品質のばらつき | 提案資料や見積書のフォーマットが担当者ごとに異なり、組織としての品質が担保できない。 |
| マネジメント工数の増大 | 責任者は本来確認すべき「内容」以前に、「形式」のチェックや修正に時間を取られる。 |
| 担当者自身の非効率 | 営業担当者は「何を提案するか」の前に「どう資料を作るか」で悩み、ノンコア業務に時間を浪費する。 |
プロセスが標準化されていないと、組織として「営業活動のどこに問題があるか」をデータで特定できません。結果として、個人のスキルに依存した不安定な組織運営から抜け出せないのです。
参照:「【属人営業から組織営業へ】急成長企業の72.1%が、営業組織の運営課題を「深刻に感じている」実態 「新人教育」や「業務プロセスの体系化」を課題視」株式会社Mer
原因③「ノンコア業務の肥大化」:報告書や会議に時間を奪われる
営業担当者が本来の「顧客と向き合う時間」を確保できていない場合、その最大の原因はノンコア業務の肥大化です。
ノンコア業務とは、売上に直接結びつかないが付随する作業全般を指します。これらが営業担当者自身の業務を圧迫している状態が問題です。
特に問題となるのが、以下のような作業です。
- 日報の作成
- 社内会議の資料準備
- 経費精算
- アポイント調整
これらのノンコア業務が営業担当者の時間を圧迫すると、組織の生産性は著しく低下します。次の章で定義しますが、このノンコア業務こそが、本来最大化すべき「コア業務」の時間を奪う最大の敵なのです。
営業効率化のゴール設定:「コア業務」と「ノンコア業務」を定義する
営業効率化の第一歩は、そのゴールを明確に定義することから始まります。効率化とは、単に作業時間を短縮することではありません。それは「営業担当者が、営業担当者にしかできない、売上に直結する活動に集中できる環境を整えること」に他なりません。
そのためには、まず組織の業務を仕分ける「定義」が必要です。本章では、「コア業務」と「ノンコア業務」がそれぞれ何を指すのかを具体的に定義します。

「コア業務」とは何か?
コア業務とは、その名の通り「組織の売上に直結する、付加価値の最も高い活動」を指します。これは、AIや他の職種では代替が難しく、営業担当者が行うことで最も成果が見込める活動です。
代表的なコア業務には、以下の3つが挙げられます。
顧客課題のヒアリング
単なる御用聞きではなく、顧客自身がまだ明確に認識していない潜在的なニーズや、ビジネス上の課題(ボトルネック)を引き出す、高度な対話活動です。
価値提案(プレゼンテーション)
ヒアリングで得た課題に対し、自社のソリューションがどう最適かを論理的に示し、顧客の意思決定を後押しするコンサルティング的な活動です。
クロージングと交渉
最終的な契約締結に向け、顧客の最後の懸念を解消し、双方にとって価値のある着地点で契約を締結する活動です。
責任者の役割は、このコア業務が何かを組織の共通認識として定義し、営業担当者がこれらの活動に集中できるよう、次項のノンコア業務から解放する策を講じることです。
「ノンコア業務」とは何か?
ノンコア業務とは、「売上に直接結びつかないが、営業活動を遂行する上で付随して発生する業務」全般を指します。重要なのは、これらが「不要な業務」ではない点です。日報もアポイント調整もビジネス上は必要です。
しかし、それらが営業担当者の時間を過度に圧迫している状態こそが問題なのです。
代表的なノンコア業務は、以下の通りです。
社内報告業務
日報、週報、会議資料の作成など。「報告のための報告」になっている作業は、真っ先に削減対象となります。
移動時間・待機時間
顧客先への往復や、アポイント間の待機時間。Web会議への代替などで削減可能な領域です。
事務・調整作業
アポイント調整、見積書・請求書作成、経費精算など。ツールや他部門への移管が可能な作業です。
効率化とは、これらのノンコア業務を「やめる(削減)」「ツールに任せる(自動化)」「別の人に任せる(移管)」ことによって、最小化する活動を指します。
効率化が目指すべき「理想の時間配分」とは
コア業務とノンコア業務を定義した上で、組織が目指すべきは、営業担当者の時間配分の「理想形」を明確にすることです。もちろん、この比率は業種や営業スタイルによって異なります。
例えば、現状が「コア業務4割、ノンコア業務6割」となっている実態(これは次の章で把握します)があるならば、それを「コア業務6割、ノンコア業務4割」に逆転させる、といった具体的なゴールを設定しましょう。
責任者の役割は、この理想の比率を現場に示すことです。この具体的なゴール設定が、次の「現状把握」のステップへとつながっていきます。
【現状把握】まず「時間の使い方」を棚卸しする
組織の業務を「コア業務」と「ノンコア業務」に定義した後は、現状を正確に把握するフェーズに移ります。感覚的な「忙しさ」だけを頼りに改善策を講じても、的外れな施策になりがちです。
効率化の第一歩は、客観的なデータに基づいて「何にどれだけ時間を使っているか」を組織全体で直視することです。以下の表は、現状把握のために踏むべき3つのステップとその目的を示しています。
| ステップ | 具体的なアクション | このステップの目的(ゴール) |
|---|---|---|
| STEP1:活動の記録 | 先に定義した「コア/ノンコア」分類で、営業担当者の活動時間を記録する。 | 組織の「時間の使い方」に関する客観的な生データを収集する。 |
| STEP2:集計・可視化 | 収集したデータを集計し、グラフなどを用いて「見える化」する。 | 組織全体として、どの業務にどれだけの時間が割かれているかを共通認識として持つ。 |
| STEP3:ボトルネック特定 | 可視化されたデータから、最も時間を浪費している「ノンコア業務」を特定する。 | データに基づき、最も改善効果が見込める「優先課題」を決定する。 |
この表に示した3つのステップ(記録・可視化・特定)を踏むことで、初めてデータに基づいた効率化の議論が可能になります。本章では、この3つのステップの具体的な進め方を解説します。
STEP1:先に定義した「コア業務・ノンコア業務」で活動を記録する
現状把握の第一歩は、営業担当者一人ひとりの活動実績を記録することです。ここで重要なのは、先ほど定義した「コア業務」と「ノンコア業務」という共通の「ものさし」を使うことです。
最低でも1週間、可能であれば2週間の期間を設定し、営業担当者に日々の活動時間を30分単位などで分類し記録してもらいます。現場の負担になりすぎないよう、分類項目をシンプルに保つことが重要です。
以下の表は、その際に用いる記録シートの簡単な一例です。

この表に示した3つのステップ(記録・可視化・特定)を踏むことで、初めてデータに基づいた効率化の議論が可能になります。本章では、この3つのステップの具体的な進め方を解説します。
現状把握の第一歩は、営業担当者一人ひとりの活動実績を記録することです。ここで重要なのは、先ほど定義した「コア業務」と「ノンコア業務」という共通の「ものさし」を使うことです。
最低でも1週間、可能であれば2週間の期間を設定し、営業担当者に日々の活動時間を30分単位などで分類し記録してもらいます。現場の負担になりすぎないよう、分類項目をシンプルに保つことが重要です。
以下の表は、その際に用いる記録シートの簡単な一例です。
STEP2:活動時間の実績を集計・可視化する
活動の記録データが集まったら、次はそれを集計し、組織全体の状態を「可視化」します。個人単位のデータを見るのではなく、まずは営業部門全体として、総労働時間のうち「コア業務」と「ノンコア業務」の比率が何対何になっているかを円グラフなどで明らかにします。

さらに、ノンコア業務の内訳(「日報作成」「社内会議」「移動時間」など)を棒グラフにし、どの業務が最も時間を圧迫しているかを明らかにします。「組織全体として、月間で〇〇時間も日報作成に使っていた」といった客観的な事実は、組織全体で変革の必要性を共有するための強力な材料となります。

STEP3:データから「ボトルネック(時間の浪費源)」を特定する
可視化されたデータ(グラフ)を基に、組織の生産性を最も阻害している「ボトルネック(時間の浪費源)」を特定します。
例えば、ノンコア業務の中で「社内会議」の割合が異常に高いことが判明すれば、その会議の目的や運営方法を見直すことが最優先の課題となります。
あるいは、「提案資料作成」の時間が想定以上に多い場合、冒頭で指摘した「プロセスの非標準化」が原因である可能性が高いと推測できます。このように、データに基づいて「組織として最も効果が出そうな改善ポイント」に優先順位をつけることが、このステップのゴールです。

【ツール選定】営業効率化に役立つ代表的なITツール
現状把握によって組織のボトルネックが特定できたら、次はその解決策としてITツールの活用を検討します。特に、冒頭で挙げた構造的な課題(属人化やノンコア業務の肥大化)は、個人の努力だけで解決することは極めて困難です。
適切なツールを導入し、業務プロセス自体を変革することが、効率化の最も強力な手段となります。本章では、営業効率化を実現するために設計された代表的なITツール(セールステック)を4つの分類で紹介します。
SFA(営業支援システム):案件進捗と営業活動の「可視化」
SFA(Sales Force Automation)は、「営業支援システム」と呼ばれます。その主な目的は、営業担当者の活動や案件の進捗状況をデータとして一元管理し、組織全体で「可視化」することです。

引用:「”Salesforce Lightning”の下のやつ?ユーティリティバーとは」TerraSky
根本原因の一つである「情報の属人化」を解消する上で最も直接的なソリューションです。担当者しか知らなかった案件の状況がチーム全体で共有されるため、責任者はデータに基づいた的確な指示やサポートを行えるようになります。
代表的なツール例:
- Salesforce Sales Cloud (株式会社セールスフォース・ジャパン)
世界シェアNo.1を誇ります。機能の豊富さとカスタマイズ性が圧倒的で、あらゆる営業プロセスに対応可能です。 - Mazrica Sales(旧 Senses)(株式会社マツリカ)
現場ファーストで開発された国産SFAです。AIが案件のリスク分析やネクストアクションを提案してくれる機能が特徴です。 - e-セールスマネージャーRemix (ソフトブレーン株式会社)
日本の営業スタイル(ルート営業など)に強みがあります。一度の入力で全ての報告が完了する「シングルインプット」が売りです。
CRM(顧客関係管理):顧客情報の「一元化」と関係性強化
CRM(Customer Relationship Management)は、「顧客関係管理」と訳されます。その主な目的は、顧客の基本情報から過去の全取引履歴、問い合わせ履歴、商談履歴まで、その顧客に関するあらゆる情報を「一元化」することです。

引用:「HubSpotのミーティングログの残し方や機能、メリットを解説」株式会社FLUED
SFAが「案件」を中心に管理するのに対し、CRMは「顧客」を中心に管理する思想に基づいています。これにより、担当者が変わっても一貫性のある対応が可能となり、顧客との長期的な関係性(LTV:顧客生涯価値)を強化することにつながります。
代表的なツール例:
- HubSpot CRM (HubSpot Japan株式会社)
顧客データベース機能が「完全無料」から使えるため、スモールスタートに最適です。マーケティングから営業まで一気通貫で管理できます。 - Sansan (Sansan株式会社)
「名刺管理」からスタートし、正確な顧客データベースを構築できるツールです。帝国データバンクとの連携など、企業情報の質に定評があります。 - kintone (サイボウズ株式会社)
業務アプリ構築プラットフォームですが、Excel管理からの脱却として、自社に合わせた簡易的なCRMを低コストで作成するのによく使われます。
SFAとCRMの使い分け
近年、SFAとCRMの機能は統合されている製品が多く、「SFA/CRM」と総称されることも一般的です。導入を検討する際は、自社の課題が「新規案件のプロセス管理を強化したい」(SFA寄り)なのか、「既存顧客との関係性を強化したい」(CRM寄り)なのか、どちらの比重が大きいかを明確にしておくと、ツール選定がスムーズになります。
MA(マーケティングオートメーション):見込み客育成の「自動化」
MA(Marketing Automation)は、マーケティング活動の「自動化」を支援するツールです。主な役割は、獲得した「見込み客(リード)」に対し、メール配信などを自動で行い、購買意欲が高まるまで「育成(ナーチャリング)」することです。

引用:「Adobe Marketo Engageのパフォーマンスインサイトでマーケティングの収益貢献を可視化す」パワー・インタラクティブ
MAが育成プロセスを担い、購買意欲が高まった見込み客だけを営業担当者に引き渡すことで、営業担当者はコア業務である「商談」に集中できます。
代表的なツール例:
- Account Engagement(旧 Pardot) (株式会社セールスフォース・ジャパン)
B2B向けMAの代表格です。Salesforce(SFA)との連携が最もスムーズで、営業への送客(パス)がシームレスに行えます。 - Adobe Marketo Engage (アドビ株式会社)
エンタープライズ(大企業)向けに強みがあります。非常に高度なスコアリングやシナリオ設計が可能で、大規模なマーケティング組織に向いています。 - SATORI (SATORI株式会社)
国産MAの代表格です。「匿名(問い合わせ前)」のWeb訪問者へのアプローチ(ポップアップ等)に強く、リード獲得自体に強みがあります。
その他(Web会議/チャット/架電ツール):特定業務の「効率化」
SFAやCRMといった大掛かりなシステムだけでなく、特定のノンコア業務をピンポイントで効率化するツールも多数存在します。
- Web会議システム(Zoom, Teamsなど):「移動時間」を削減します。
- ビジネスチャット(Slack, Chatworkなど):「コミュニケーションコスト」を削減します。
- CTI(架電ツール)や日程調整ツール:特定の事務作業を自動化します。
ツールの情報収集について
これらのツールは、「SFA 比較」「CRM おすすめ」といったキーワードで検索することで、多くの客観的な比較サイト(例:ITreview、BOXIL、ITトレンドなど)が見つかります。各ツールの機能や価格、導入企業の口コミなどを参考にし、自社の課題解決に最適なツールを選定することが重要です。
【根本解決】なぜSFA/CRMが「非効率の根本原因」を解決するのか
代表的なツールを概観しましたが、特に組織の「非効率の根本原因」である、先に挙げた課題(属人化、非標準化、ノンコア業務肥大化)を解消する上で中核となるのがSFA/CRMです。
しかし、これらのツールは導入しただけで成果が出る魔法の杖ではありません。本章では、SFA/CRMが根本原因を具体的にどう解決するのか、そのメカニズムを解説します。また、導入が失敗する典型的なパターンと、最も重要な「現場に定着させるために責任者がやるべきこと」について、深く掘り下げていきます。
SFA/CRMによる「情報の属人化」の解消
SFA/CRMが、根本原因の一つである「情報の属人化」を解決する仕組みは明確です。
それは、これまで担当者の頭の中や個人のExcelにあった「案件情報」や「顧客情報」を、すべてシステム上の「共有データベース」に入力することを組織のルールとするからです。
これにより、責任者や他のメンバーは、いつでも最新の案件進捗や顧客とのやり取りの履歴にアクセスできるようになります。情報が組織の資産として蓄積されるため、異動や退職による引き継ぎコストも最小限に抑えることが可能です。
SFAによる「プロセスの非標準化」の解消
根本原因の一つである「プロセスの非標準化」に対してもSFAは有効です。多くのSFAには、営業活動の「フェーズ(段階)」を定義する機能が備わっています。
例えば、「初回訪問」「提案書提出」「見積もり提示」「クロージング」といった営業の標準プロセスをシステム上に定義します。
営業担当者は、自分の案件が今どのフェーズにあるかをSFA上で更新するだけでよくなります。これにより、組織全体で「営業の共通言語」が生まれ、どの担当者でも一定の品質で営業活動を進められるようになります。
SFAは「管理ツール」ではなく「営業担当者の武器」である
SFA導入が現場の抵抗に遭う最大の理由は、「監視・管理される」という誤解です。責任者は、SFAが「責任者のためのツール」である以上に、「現場の営業担当者のための武器」であることを明確に示さなければなりません。
SFAは、正しく活用すれば、現場担当者のノンコア業務を劇的に削減し、コア業務に集中する時間を生み出す強力な支援ツールです。
現場のメリット:ノンコア業務(日報・報告)の削減
現場の営業担当者にとっての最大のメリットは、根本原因の一つである「ノンコア業務の肥大化」の解消です。
SFAに活動内容(例:〇〇社を訪問し、□□を提案)を一度入力するだけで、それが「日報」であり「案件進捗報告」として完結する仕組みを構築できます。二重、三重の報告業務から解放されることは、現場にとって何よりのインセンティブです。
また、過去の類似案件の提案資料や、顧客のクレーム履歴にシステムから即座にアクセスできることも、提案の準備時間を短縮し、コア業務の質を高めるための強力な「武器」となります。
責任者のメリット:組織状況の可視化とデータに基づく指示
一方、責任者にとってのメリットは、組織の状況がリアルタイムで「可視化」されることです。どの案件が順調で、どの案件が停滞しているのかを、ダッシュボードやレポートで一目で把握できます。
これにより、責任者のマネジメントスタイルは「勘と経験」や「担当者からの報告待ち」から、「データに基づく客観的なアドバイス」へと進化します。問題が発生する前に「先回り」して手を打てるようになるため、マネジメントの質と効率が飛躍的に向上します。
ツール導入が失敗する典型的なパターン(使われない理由)
SFA/CRM導入が失敗し、現場で使われない「高価な日報システム」と化してしまうケースは後を絶ちません。その多くは、ツールの機能ではなく、導入・運用の設計ミスに問題を抱えています。
以下の表に、SFA導入が失敗する典型的なパターンとその背景をまとめます。これらを回避することが、導入成功の第一歩です。
| 失敗パターン | 発生する事象(現場の状況) | 背景にある問題(設計ミス) |
|---|---|---|
| 入力項目の肥大化 | 現場がSFAへの入力を「最大のノンコア業務」と感じ、入力しなくなる。 | 管理部門や責任者が「あれもこれも知りたい」と、現場の負担を考えずに必須項目を増やしすぎた。 |
| 現場メリットの欠如 | 入力しても何もフィードバックがなく、「入力するだけ損」な状態になる。 | 導入目的が「管理の強化」に偏り、現場の業務が楽になる設計(現場のメリット)が無視された。 |
| 責任者が活用しない | 会議ではSFAデータを見ず、従来通りの口頭報告を求める。 | 責任者自身がツールの使い方やメリットを理解しておらず、旧来のマネジメントスタイルから脱却できない。 |
表に示した通り、失敗の多くは「現場の視点」の欠如から生じます。ツールは導入がゴールではなく、現場で「使われ続ける」ことこそがゴールです。
SFAを現場に定着させるために責任者がやるべきこと
SFA導入の成否は、導入後3ヶ月間の「現場定着」にかかっています。ツールを入れただけで満足せず、責任者が率先して以下の3つのアクションを実行することが不可欠です。
- 導入目的の翻訳と現場メリットの提示
「経営データの可視化」といった管理側の都合ではなく、「二重報告の廃止」や「引き継ぎの効率化」など、現場がどう楽になるかを具体的に伝えます。 - 入力項目の「スモールスタート」
最初から完璧なデータを求めると現場は疲弊します。必須項目は「案件名」「フェーズ」「次回アクション」の3点程度に絞り、まずは入力習慣の定着を最優先にします。 - 責任者自らSFA上のデータを活用する
口で「入力しろ」と言うだけでなく、会議ではSFAのダッシュボードを必ず投影します。「SFAに入力がない案件は会議で扱わない」というルールを徹底することが、定着への最短ルートです。
明日から組織で始められるスモールスタート施策4選
SFA/CRMの導入のような大掛かりな改革(根本解決)には、時間もコストもかかります。しかし、営業効率化はそれだけではありません。
組織の「非効率」を解消するために、責任者の号令で明日からでも始められる、即時実行可能な施策(TIPS)も数多く存在します。本章では、先に定義した「ノンコア業務」を削減するために、組織単位で比較的導入しやすい効率化TIPSを4つ紹介します。
施策①:「移動時間」を削減するWeb会議の積極活用
施策②:「資料作成時間」を削減する標準テンプレートの整備
施策③:「コミュニケーションコスト」を削減するビジネスチャットの活用
施策④:「情報収集・事務作業」を高速化するAI(生成AI)の活用
施策①:「移動時間」を削減するWeb会議の積極活用
ノンコア業務である「移動時間」は、Web会議システム(Zoom, Teams, Google Meetなど)の積極的な活用によって劇的に削減できます。
責任者として「社内会議は原則Web会議」「既存顧客との定期ミーティングはWeb会議を第一候補とする」といった明確なルールを打ち出すことが有効です。移動時間が削減されれば、その時間を他のコア業務(例:新規提案の準備)に充てることができます。
施策②:「資料作成時間」を削減する標準テンプレートの整備
根本原因の一つである「プロセスの非標準化」への対策として、SFA導入(フェーズ標準化)と並行して進めるべきなのが、「提案資料」や「見積書」の標準テンプレート整備です。
特に成果を出しているトップ営業担当者の資料構成を参考に、組織としての「勝ちパターン」の雛形を作成し、共有フォルダなどで一元管理します。
これにより、営業担当者は毎回ゼロから資料構成を考える必要がなくなり、「資料作成時間」というノンコア業務を大幅に削減できます。また、組織としての提案品質が標準化され、ボトムアップが図れるというメリットもあります。
施策③:「コミュニケーションコスト」を削減するビジネスチャットの活用
社内での「報・連・相」の多くがメールで行われている場合、それは大きな「コミュニケーションコスト(非効率)」を生んでいる可能性があります。メールは「お疲れ様です」といった形式的な挨拶や署名が必要であり、迅速なやり取りには向きません。
SlackやChatworkなどの「ビジネスチャットツール」を導入し、社内の主要なコミュニケーション(特に営業部門内)をチャットに移行させることは、即時性の高いTIPSです。「案件Aの件、見積もり承認お願いします」「承知しました」といったやり取りが数秒で完結するため、意思決定のスピードが格段に上がります。
施策④:「情報収集・事務作業」を高速化するAI(生成AI)の活用
近年、急速に進化しているAI(特にChatGPTなどの生成AI)は、営業のノンコア業務を削減する強力な武器です。
特に効果的なのが「リサーチ」と「事務作業」です。提案先企業の業界動向を調べたり、商談後の御礼メールを一から考えたりする時間は、積み重なると膨大になります。これらをAIに任せることで、準備時間を大幅に短縮できます。
以下の画像は、明日からすぐに使える具体的なプロンプト(指示文)と回答の例です。
【活用例A:情報収集のリサーチ時間を短縮する】
一つひとつニュースサイトを検索するのではなく、AIに「トレンド」や「競合動向」を要約させます。提案の切り口まで提示させることで、仮説構築のスピードが格段に上がります。


【活用例B:日々の事務作業を自動化する】
商談直後の「御礼メール」のドラフト作成や、SFAに入力するための「議事録要約」もAIの得意領域です。箇条書きのメモを渡すだけで、適切なビジネス文書に変換してくれます。


AI活用に関する注意点
生成AIのビジネス活用においては、セキュリティ対策が必須です。顧客の個人情報や機密情報をそのまま入力しないよう、組織的なガイドラインを策定した上で活用してください。
営業効率化を成功させるための2つの重要ポイント
これまで、原因の特定からゴール設定、現状把握、そして具体的な解決策(ツールやTIPS)まで、営業効率化のロードマップを解説してきました。しかし、これらの施策を単に実行するだけでは、改革は長続きしません。
本章では、これらの施策を組織に根付かせ、効率化を「一過性のイベント」ではなく「継続的な文化」にするために、責任者が心得るべき最も重要な2つのポイントについて解説します。
ポイント①:感覚的な「忙しさ」ではなく「データ」で判断する
効率化の推進において、責任者が最も陥りやすい罠は「感覚」で判断してしまうことです。「業務棚卸し(現状把握)」の重要性は、この「感覚」を排除するためにあります。
現場から「日報作成が大変だ」という声が上がってきたとします。ここで「わかった、日報を簡素化しよう」と即断するのではなく、まずは業務棚卸しのデータに立ち返るべきです。
客観的なデータこそが、組織の進むべき方向を指し示す羅針盤となります。
ポイント②:現場を巻き込み「共通認識」を持つ
営業効率化は、責任者がトップダウンで「やれ」と命じるだけでは決して成功しません。なぜなら、その施策を実行するのは現場の営業担当者自身だからです。
「現状把握(業務棚卸し)」のステップから現場のメンバー(特に影響力のある中堅・エース級)をプロジェクトに巻き込むことが重要です。「自分たちの非効率」をデータで直視し、「自分たちのボトルネック」を特定するプロセスに当事者として関わることで、「これは自分たちの問題を解決するための改革だ」という共通認識が生まれます。
この共通認識こそが、変革の抵抗を乗り越える最大の原動力となります。
【事例紹介】彼らはどうやって「非効率」から脱却したか
ここまで解説してきたロードマップは、実際に多くの企業が取り組んでいるプロセスです。机上の空論ではなく、非効率に悩む組織が生産性を高めるための実証された道筋と言えます。
本章では、冒頭で挙げた根本原因をいかにして解決したか、2社のモデルケースを紹介します。ご指示に基づき、具体的な企業名を挙げて解説します。(※以下の事例は、公開されている情報を基に、本記事の文脈に合わせて再構成したものです。)
株式会社セールスフォース・ジャパン:SFA/CRMを自ら徹底活用し、非効率を排除する文化

世界最大のSFA/CRMベンダーである株式会社セールスフォース・ジャパン(以下、セールスフォース社)は、自社製品を最も徹底的に活用している企業の一つです。彼らにとってSFA/CRMは、自社の営業活動における「非効率」を排除するための基幹インフラとして機能しています。
根本原因の一つである「情報の属人化」は、彼らの仕組みにおいては原理的に発生しえません。全ての顧客情報、案件進捗、活動履歴はリアルタイムでSFA(Sales Cloud)に記録されます。先に解説した「責任者がSFA上のデータを活用する姿勢」を組織全体で徹底しており、会議はSFAのダッシュボードを基に行われます。
以下の表に、セールスフォース社のアプローチをまとめます。
| 課題(一般的な企業の課題) | セールスフォース社のアプローチ | 導入後の成果(得られる状態) |
|---|---|---|
| 情報の属人化 | 自社SFA/CRMへのリアルタイムな情報入力を徹底 | 組織全体での顧客情報・案件情報の完全な透明化 |
| ノンコア業務の肥大化 | SFAへの一度の入力で報告業務が完了。 | 営業担当者が「報告書」を作成する時間がゼロになり、コア業務に集中できる。 |
| プロセスの非標準化 | SFA上で標準化された営業フェーズを全社で運用 | データに基づき「どのフェーズがボトルネックか」を即座に分析・改善できる。 |
セールスフォース社の事例は、SFA/CRMというツールを導入するだけでなく、それを「組織の共通言語」として徹底的に活用し、根本原因を解消する「文化」を構築したことが、彼らの高い生産性の源泉であることを示しています。
参照:「Salesforce流Salesforce活用術」株式会社セールスフォース・ジャパン
事例情報の参照元について
このような先進企業の取り組みは、各社が運営するオウンドメディアや、導入事例を紹介する記事(例:「Salesforce 活用事例」などで検索)で数多く公開されています。自社と近い業種や規模の企業の事例を参照することは、効率化のヒントを得る上で非常に有益です。
株式会社三井住友銀行:SFA導入と現場定着で「コア業務」への集中を実現

金融業界もまた、「情報の属人化」(担当者しか顧客の状況を知らない)や、「ノンコア業務の肥大化」(報告・事務作業の多さ)に長年悩んできた業界です。株式会社三井住友銀行は、この課題を解決するため、全行的なSFA導入プロジェクトを推進しました。
彼らの取り組みが優れていたのは、「SFAを現場に定着させるために責任者がやるべきこと」を忠実に実行した点です。特に、「スモールスタート」を意識し、当初は入力項目を絞り込み、現場の営業担当者が「ツールを使うことで日々の報告業務が楽になる」という「現場メリット」を実感できる設計を優先しました。
以下の表に、三井住友銀行のアプローチをまとめます。
| 導入前の課題 | 実施した施策(SFA活用) | 導入後の成果 |
|---|---|---|
| 顧客情報や案件情報が「属人化」 | 全行的なSFA導入による顧客情報の一元化 | 担当者変更時のスムーズな引き継ぎ。組織的な顧客対応力の向上。 |
| 日報や報告書作成が「ノンコア業務」として肥大化 | SFAへの入力で報告が完了する仕組みを構築(現場メリットの提示) | 報告事務作業の大幅な削減。 |
| 勘と経験に頼ったマネジメント | SFAのデータを活用した営業活動の「可視化」 | 責任者がデータに基づき、若手行員へ的確な指導・支援が可能になった。 |
結果として、営業担当者は日々の事務作業から解放され、本来注力すべき「顧客との対話」や「課題解決の提案」(=コア業務)に多くの時間を割けるようになりました。この事例は、伝統的な大企業であっても、明確な目的意識と現場に寄り添った導入設計(現場を巻き込むこと)があれば、ツール活用による組織改革(=非効率からの脱却)が実現可能であることを示しています。
参照:「SMBCグループ、Salesforce Sales Cloud導入 各社の営業ノウハウ共有へ」SalesZine
まとめ:営業効率化は「小さな一歩」から始まる継続的な改善プロセスである

本記事では、営業効率化のロードマップを解説しました。成功のポイントは以下の3点に集約されます。
- 現状把握:感覚ではなく「データ」でボトルネックを特定する
- ツール活用:SFA/CRMを「現場の武器」として定着させる
- 継続的改善:一度きりで終わらせず、PDCAを回し続ける
まずは自社の課題を一つ特定し、改善に向けた小さな一歩を踏み出してみてください。
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出版業界、テレビ業界、大手カフェチェーンと業界を転々とした後に株式会社Sales and Innovation Japanに入社。程なくして某大手SaaS企業のインサイドセールス代行にアサイン。様々な業界での経験を活かし、日々奮闘中。

