営業力向上のための定番手法として知られる「ロープレ」ですが、「意味がない」「効果が感じられない」という声も少なくありません。しかし、正しい進め方と運用方法を身につければ、ロープレは営業チームの実力向上に大きく貢献します。
本記事では、営業ロープレの効果的な実施方法から、上手い人の特徴、組織への根付かせ方まで詳しく解説します。
営業ロープレは意味ない?
営業ロープレが「意味ない」と感じられる理由は、実施方法に問題があるケースがほとんどです。また、実際の商談との差が大きいロープレでは、現場での応用が困難になります。
効果的なロープレを実現するには、リアルな場面設定、明確な目的設定、そして建設的なフィードバックが欠かせません。ここからは、これらの要素を含む正しいロープレの進め方を詳しく説明していきます。
そもそも営業ロープレとは
営業ロープレとは、実際の商談シーンを想定して行う模擬練習のことです。営業担当者が顧客役と営業役に分かれて、商品紹介や課題ヒアリング、クロージングなどの一連の流れを再現します。
営業ロープレは「練習試合」のようなもので、実戦で力を発揮するための準備段階です。適切に実施すれば、個人スキルの向上だけでなく、チーム全体の営業力底上げにも貢献します。 |
ロープレの主な目的は、実際の商談前にトークスクリプトの確認や、顧客の反応に対する対応力の向上を図ることです。安全な環境で失敗を経験し、改善点を見つけることで、本番での成功確率を高める効果があります。
ロープレが上手い人の特徴3選
効果的なロープレを実施できる人には、共通する特徴があります。これらの特徴を理解することで、チームメンバーの指導や自身のスキル向上に活かせます。
①実際のお客様を想像している
ロープレが上手い人は、架空の設定ではなく、実際のお客様の顔を思い浮かべながら練習しています。具体的な業界や立場、抱えている課題を想定することで、リアルな受け答えができるようになります。
顧客役を担当する際も、その業界の特徴や担当者の心境を考慮した質問や反応を示せます。例えば、IT業界の経営者と製造業の現場責任者では、同じ商品に対する関心ポイントが異なることを理解しているのです。
このような想像力を働かせることで、ロープレでの経験が実際の商談でも活かしやすくなります。単なる台本の読み合わせではなく、お客様の立場に立った対応力を養うことができるでしょう。
②台本に頼りすぎず自分の言葉で伝えている
トークスクリプトを完璧に暗記することは大切ですが、上手い人は台本を「道しるべ」として活用しながら、自分の言葉で伝える力を持っています。機械的な説明ではなく、相手の反応を見ながら柔軟に話し方を調整できるのです。
台本通りの説明で相手が理解できていない場合、別の表現や具体例を使って分かりやすく伝え直します。また、顧客からの想定外の質問に対しても、商品知識を活かしながら自然な会話を続けられます。
③お題(設定)を具体的に決めてから臨んでいる
効果的なロープレを行う人は、事前に詳細な場面設定を決めています。顧客の業界、企業規模、担当者の立場、現在抱えている課題など詳しく決めてからロープレに取り組むことで、その場面に適した質問や提案ができるようになり、実践的な練習が可能になります。
曖昧な設定でのロープレは、当たり障りのない会話に終始しがちです。しかし、具体的な設定があることで、現実の商談に近い緊張感や判断力を鍛えることができるでしょう。
ロープレの事前準備3STEP
効果的なロープレを実施するには、事前の準備が欠かせません。準備を怠ると、形だけの練習になってしまい、実際の商談での成果につながりません。以下の3ステップで、しっかりと準備を整えましょう。
STEP1 | 商材を理解・深掘りする | 商品の強みや競合との違いを把握し、自分の言葉で説明できるようにする |
STEP2 | 顧客の想定課題を洗い出す | 業界や立場ごとのニーズを想定し、ヒアリング力・提案力を高める準備を行う |
STEP3 | ロープレの目的・役割を明確にする | 商談フェーズや相手の設定を明確にし、リアルなやりとりに備える |
STEP1 商材を理解・深掘りする
まず、自社商品の特徴、強み、競合との違いを整理し、自分の言葉で説明できるようにしておきます。商品カタログの内容を暗記するだけでなく、なぜその機能が必要なのか、どのような課題解決につながるのかを理解することが重要です。
競合他社の商品と比較した際の優位性も明確にしておきましょう。
・価格
・機能
・サポート体制
上記のような様々な角度から自社商品の位置づけを把握します。お客様からの鋭い質問に対しても、根拠を持って回答できる準備が必要です。
STEP2 顧客の想定課題を洗い出す
その商材が役立ちそうな業界、立場、シーンを考え、どのような悩みやニーズがあるかをリストアップします。業界特有の課題や、企業規模による違い、部署によって異なる関心事などを整理しておきましょう。
例えば、営業支援ツールを扱う場合、営業部長は「チーム全体の生産性向上」に関心があり、営業担当者は「日々の業務効率化」に興味を持つといった具合です。 |
実際の商談では、お客様の課題をヒアリングしながら最適な提案を行います。事前に想定課題を洗い出しておくことで、相手の発言から真の課題を見抜く力が身につくでしょう。
STEP3 ロープレの目的・役割を明確にする
「どのフェーズの営業か」「誰に何を伝えるロープレか」を明確にし、自分が担う役割をはっきりさせます。初回訪問でのアポイント獲得なのか、提案書を使った商品説明なのか、最終的なクロージングなのかによって、準備すべき内容も変わってきます。
営業役と顧客役、それぞれの設定も詳しく決めておきます。顧客役の人には、想定する企業の業界、規模、現在の課題、性格的な特徴なども伝えておくと、よりリアルなやりとりが可能になります。
またリード別でも顧客の対しての対応が変わります。リードには4段階あり、例えば、認知段階では、一方的な売り込みではなく、役立つ情報提供を通じてリードの関心を引き続き維持・向上させることが重要です。
詳しくは、下記記事で解説していますので是非ご覧ください。
ロープレのやり方
実際にロープレを実施する際の具体的な進め方について解説します。効果的なロープレには、適切な手順と環境づくりが欠かせません。YouTubeでも多くの営業研修動画でロープレの実践例が紹介されており、可視化された手法を参考にすることで理解が深まります。
以下の動画ではロープレのやり方について実演付きで詳しく解説されています。
文章ももちろん確認した上で、以下動画でイメージを膨らませてみてください。
営業ロープレ YouTube 動画
【即興ロープレ】AI嫌いの営業部長にAIを売れ!──”敵から味方へ” 今井晶也が築いたWE営業
Youtube動画:「【即興ロープレ】AI嫌いの営業部長にAIを売れ!敵から味方へ今井晶也が築いたWE営業」NEW SALESチャンネル~みんなが売れる営業になる~
お題(設定)を具体的に決める
まずは「誰に」「何を」「なぜ提案するのか」を明確にしましょう。抽象的な設定では、当たり障りのない会話になってしまい、実践的な練習になりません。
具体的には、下記のようなフォーマットで設定します。例えば、「従業員100名の製造業、総務部長、テレワーク導入を検討中、予算は月額10万円程度」といった詳細な設定が理想的です。
設定フォーマット 業界: 規模: 担当者の役職: 現在抱えている課題: |
この設定を営業役と顧客役で事前に共有することで、お互いが役になりきりやすくなります。リアルな商談に近い緊張感と判断力を鍛えることができるでしょう。
役割を決める(営業役と顧客役)
営業役・顧客役の役割を事前に共有し、それぞれの立場を明確にします。顧客役には想定課題や性格も伝えると、リアリティのあるやりとりができます。
顧客役を担当する人は、その業界の特徴や担当者の心境を理解して演じることが大切です。例えば、IT業界の経営者であれば技術的な質問を投げかけ、製造業の現場責任者であれば導入後の運用面を心配するといった具合です。
営業役は、相手の立場や関心事を考慮しながら、適切な提案を行います。一方的な商品説明ではなく、相手の課題解決につながる提案を心がけることが重要です。
ロープレを実施(5-10分程度)
話す内容に詰まっても中断せず、最後までやりきるのがポイントです。録音・録画しておくと、後から客観的に振り返りやすくなります。
実際の商談では、思い通りにいかない場面が多々あります。ロープレでも同様に、詰まったり、想定外の質問を受けたりすることがありますが、そこで止めずに最後まで続けることで対応力が鍛えられます。 |
時間は5-10分程度が適切です。長すぎると集中力が続かず、短すぎると十分な練習になりません。一つのフェーズに絞って、集中的に練習することで効果が高まります。
振り返りとフィードバック
ロープレ後はすぐに振り返りを行いましょう。自己評価・相互評価の両方を行うと気づきが深まります。次に活かすためには「何がよかったか」「改善点は何か」を具体的に言語化することが大切です。
振り返りの時間を惜しむと、ロープレの効果は半減してしまいます。実施時間と同じくらいまたは、それ以上の時間をかけて、しっかりと振り返りを行うことが成長につながります。 |
まず営業役から自己評価を行い、その後顧客役からフィードバックをもらいます。感想ではなく、具体的な行動や発言に対する評価を心がけましょう。「話し方が良かった」ではなく、「課題を整理してから提案に移ったのが分かりやすかった」といった具合です。
営業ロープレの評価ポイント【チェックシート付】
ロープレの効果を最大化するには、客観的な評価基準が必要です。感覚的な感想だけでなく、具体的な評価項目を設けることで、継続的な改善が可能になります。
営業ロープレチェックシート
このチェックシートは、ロープレ参加者全員で記入し、後から見返したり、過去のシートと比較することで成長を実感できます。コメント欄には、次回に活かせる具体的な改善点や良かった点を書くことが大切です。
テンプレートは以下からご使用ください。
【Sales and Innovation Japan】営業ロープレチェックシート(コピーで作成よりご活用ください)
フィードバックしやすくなるチェックシート活用法
チェックシートは評価するためのものではなく、対話のきっかけに使うのがポイントです。2回目以降は過去のシートと点数を比較できるため、成長の実感につながります。
チェックシートは「成長の記録」として活用しましょう。評価のためではなく、改善のためのツールとして使うことで、前向きな学習環境を作ることができます。 |
評価者は、チェックシートを見ながら「この項目で4をつけた理由は…」「前回と比べてここが向上している」といった具体的なフィードバックを行います。そうすることで、改善すべき点が明確になり、次回のロープレで意識すべきポイントが分かりやすくなります。
ロープレが苦手な人向けのコツ
ロープレに苦手意識を持つ人は少なくありません。「頭が真っ白になる」「何を話せばいいか分からない」という声もよく聞かれます。しかし、適切なアプローチで練習すれば、必ず上達できます。
まずトークの型を身につける
ロープレが苦手な人は、まず基本的なトークの型を身につけることから始めましょう。
アイスブレイク→課題ヒアリング→提案→クロージング |
という流れを覚えることで、迷いなく進められます。
アイスブレイクでは相手との距離を縮め、課題ヒアリングで真のニーズを探り、提案で解決策を示し、クロージングで次のステップを確認します。この流れを頭に入れておくことで、「次に何を話せばいいか」が明確になります。
最初は台本通りでも構いません。型を身につけることで、徐々に自分の言葉で話せるようになり、お客様に合わせた柔軟な対応ができるようになるでしょう。
以下記事では、営業のテクニックについて徹底解説していますので是非ご覧ください。
相手の気持ちを想像する
まずはお客様の気持ちや考えを想像して、その人が分かりやすく、納得しやすい話し方を考えましょう。商品を説明するよりも、「この人のための話だ」と感じてもらうことがポイントです。
例えば、忙しい経営者には結論を先に伝え、技術者には詳細なスペックを説明し、現場担当者には実際の運用イメージを具体的に話すといった具合です。相手の立場に立って考えることで、自然と話すべき内容が見えてきます。
「自分が相手の立場だったら、どんな説明を聞きたいか」を常に考える習慣をつけることで、相手に寄り添った営業ができるようになります。これは、ロープレでも実際の商談でも共通する重要なスキルです。
声に出して練習するクセをつける
頭で考えるだけでなく、実際に声に出して練習することが大事です。口に出すことで言いにくい部分や、詰まりやすいポイントに気づけます。最初は台本を見ながらでもOKです。
一人でも練習できる方法として、鏡の前で自分に向かって話す、スマートフォンで録音して客観的に確認する、といった手法があります。何度か繰り返すことで、自然と自信もついてきます。
営業は「慣れ」の要素が大きなスキルです。繰り返し練習することで、必ず上達します。完璧を求めすぎず、少しずつでも前進することを意識しましょう。
ロープレを組織に根付かせる運用
個人の練習だけでなく、組織全体でロープレを継続的に実施することで、チーム全体の営業力向上が期待できます。しかし、形だけの取り組みでは長続きしません。効果的な運用方法を確立することが重要です。
チェックシートを毎回記載する
ロープレ後に毎回、できたこと・できなかったことをチェックシートで確認することで、振り返りと成長につなげやすくなります。過去のシートと見比べることで、継続的な改善が可能になります。
チェックシートの記載を習慣化することで、メンバー一人ひとりが自分の成長を実感できます。また、管理者側も各メンバーの強みや課題を客観的に把握できるため、個別指導にも活用できます。
定期的にチェックシートを見返し、成長した点を認めることで、メンバーのモチベーション向上にもつながります。評価のためではなく、成長のためのツールとして活用することが大切です。
チャットツールに報告を上げる
実施報告や気づきをチームのチャットに共有することで、全体の意識が高まり、継続的な取り組みにつながります。他のメンバーの学びを共有することで、組織全体のレベルアップが期待できます。
弊社では、Slackにロープレ専用チャンネルを設けており、実施報告や気づきを共有しています。「今日のロープレで○○の手法を試してみた」「△△の質問への対応が上手くいった」といった報告が日々投稿されています。
以下、ロープレの実施報告フォーマットです。
実施報告フォーマット 【実施内容】20250724 ロープレ相手: プロジェクト名: 状況: 【フィードバック】ロープレした相手からいただいたフィードバックをここに記載 【気づき】ロープレを通しての個人での気づき気づいたことに対して、次回からどうしていくのかなどの打ち手を記載 |
この共有により、他のメンバーの工夫や成功事例を学ぶことができます。また、継続的に投稿することで、ロープレが組織の文化として定着していきます。管理者は、良い事例を取り上げてコメントすることで、さらに学習効果を高めることができるでしょう。
AIを活用したロープレ
近年、AI技術の発達により、営業ロープレの分野でも革新的な変化が起きています。AIロープレの最大の特徴は、相手の空き時間に合わせる必要がなく、営業担当者は自分のペースで繰り返し練習を行うことができる点です。従来のロープレでは、同僚や上司の時間を確保する必要がありましたが、AIなら24時間いつでも練習相手になってくれます。
AIロープレの活用が広がる中で、実際に導入して成果を上げている企業も増えてきています。ここからは、そんなAIロープレを取り入れている注目企業やサービス事例をご紹介していきます。
AmiVoice® RolePlay
AmiVoice® RolePlay https://www.advanced-media.co.jp/products/amivoice-roleplay/ 2025/7/24
AmiVoice® RolePlayは、AIによる定量評価で営業ロープレを効率化するセルフトレーニングプラットフォームです。動画の自動採点、評価基準のカスタマイズ、学習状況の可視化など、人材育成を幅広くサポート。話速や笑顔の判定、対面ロープレ評価にも対応し、導入時のコンサルやシナリオ作成支援も充実しています。
カルティロープレ
カルティロープレhttps://aismiley.co.jp/product/sapeet_ai-roleplaying/2025/07/23
カルティロープレは、顧客やプレゼン相手を再現したAIアバターと対話する実践型の営業トレーニングツール。商談・接客・プレゼンなど幅広いシナリオに対応し、リアルな営業体験を通じて即戦力化を支援します。AIによる文字起こし・改善点のフィードバック機能も搭載。
Steach(スティーチ)
面接練習アプリSteach https://jaic-steach.jp/ 2025/07/23
Steachは、AIが面接の様子を分析・スコア化してくれるスマホ向け面接練習アプリ。5分程度の練習で、話す速さや表情、視線、明瞭さなどをレーダーチャートで可視化し、改善ポイントをフィードバック。
AIロープレは人間同士のロープレを置き換えるものではなく、より多くの練習機会を提供し、個人の成長を加速させる補完的なツールとして活用することが重要です。
まとめ

いかがでしたでしょうか。営業ロープレは正しい方法で実施すれば、個人のスキル向上だけでなく、組織全体の営業力強化につながる強力なツールです。
「意味がない」と言われがちなロープレも、具体的な場面設定、適切な準備、建設的なフィードバックを心がけることで、実際の商談で活かせる実践的なスキルを身につけることができます。上手い人の特徴を参考にしながら、チーム全体でロープレの質を向上させていきましょう。
また、AIを活用した新しい形のロープレも登場しており、従来の制約を超えた練習環境が実現可能になっています。従来の人対人のロープレと組み合わせることで、より効果的な営業力向上が期待できるでしょう。
弊社Sales and Innovation Japanは、営業に不安がある企業様をサポートし、成果を上げるお手伝いをいたします。毎月の研修を通じて、スキルアップや新たな気づきを得たい方に最適な機会を提供しています。まずは、お気軽にご相談ください。


早稲田大学卒業後、コンサルティングファームを経て、
株式会社Sales and Innovation Japanにジョイン。
大手スキマバイトアプリの営業支援や、ITシステム事業の新規事業立ち上げに従事。
現在、エンタープライズ企業向けコミュニティ“EIN”の立ち上げに奮闘。