営業組織の立ち上げ方法とは?プロセスや各段階ごとのtodoを徹底解説

営業組織を立ち上げる際には、戦略の策定から始まり、組織の設計、人材の採用、プロセスの構築まで、各段階で慎重に計画を立てることが重要です。どの段階も成果に直結するため、一貫したアプローチを取ることが求められます。ここでは、営業組織を構築するための具体的なプロセスと、各段階でのToDoを徹底的に解説します。新たに営業組織を立ち上げようとしている方に向け、具体的な手順と注意点を紹介し、成功に導く方法を提案します。

理想の営業組織とは

理想の営業組織とは何でしょうか。まず、この疑問に向き合うところから始めたいと思います。

近年の営業組織は、単純な売上追求型から、複合的な価値を創造するモデルへと進化しています。市場環境が日々変化する中で、組織としての対応力が問われているのです。

一般的に「営業=個人プレーヤー」というイメージが根強く残っていますが、実は個人の判断や行動に依存したスタイルでは、思うような成果を上げにくい状況になってきています。チームとしての組織力、そして一貫した営業プロセスの確立が重要なポイントとなるのです。

理想的な営業組織が持つべき特徴は、主に3つあります。

  • 変化への対応力
  • 目標・KPIへのコミットメント
  • 自走できる組織体制

市場のニーズや競合状況の変化を素早く察知し、新たな営業手法を柔軟に導入できる組織であること・具体的な数値目標と行動指標を組織全体で共有し、PDCAを回せること・メンバー人ひとりが、組織としての方向性を理解した上で、主体的に行動できる環境が整っていることが重要です。

このような特徴を備えた組織では、個々の営業パーソンの力を最大限に引き出しながら、チームとしての強みも発揮できます。結果として、持続的な成長と、メンバー全員が働きがいを感じられる組織文化の醸成につながるのです。

営業組織の立ち上げプロセスとは

営業組織の立ち上げプロセスについて解説します。組織づくりは一朝一夕にはいきません。確実な成果を出すためには、計画的なステップを踏んでいく必要があります。

具体的には、大きく3つのフェーズに分けて考えるのがポイントです。

  • 組織内での立ち位置定義
  • 業務事前準備
  • 運用準備

組織内での立ち位置定義をすることで、この営業組織が会社の中でどんな役割を果たすのか、どんな価値を生み出していくのかをしっかり決めることが、その後の活動の土台になります。

業務事前準備を行うことで、実際の営業活動をイメージしながら、具体的な業務の設計やツールの選定を行います。例えばSFAの導入や、商談プロセスの設計など、実務的な準備を進めていきます。

運用準備では、いよいよ実際の営業活動をスタートさせるための体制づくりです。特に大切なのは、PDCAを回せる仕組みづくり。常に改善できる余地を残しておくことで、より良い組織へと進化させることができます。

このように段階的にアプローチすることで、効果的な営業組織の立ち上げが可能になります。まずはこの3つのフェーズを意識して、一歩ずつ着実に進めていきましょう。

業務事前準備段階のTodo

営業組織の立ち上げにおいて、業務事前準備は組織の基盤を形成する重要なステップが4つあります。この段階で営業プロセスや役割を明確に定義し、効果的な実行体制を構築することが、その後の成功を大きく左右します。

【ステップ1】営業プロセス・役割設計

営業組織の役割は、大きく「アウトバウンド型」と「インバウンド型」の2つに分類できます。

アウトバウンド型を担当するBDR(Business Development Representative)は、リストや市場調査に基づき、積極的に見込み顧客へアプローチする能動的な営業活動を行います。

一方、インバウンド型を担当するSDR(Sales Development Representative)は、問い合わせや資料請求などの反応に対応し、マーケティング施策による見込み顧客からの接触を通じてリード育成を行います。この2つの役割を適切に組み合わせ、組織の規模や商材の特性に応じて比重を調整することで、効果的な営業サイクルを構築することができます。

BDRの場合

アウトバウンド営業を担当するBDRは、新規開拓の専門家として市場を開拓していく役割を担います。効果的なBDR活動を実現するためには、以下のような体系的なプロセス設計が必要です。

フェーズ具体的なアクションKPI
準備フェーズ・ターゲット企業リストの作成
・企業情報の収集と分析
・アプローチ計画の立案
・ターゲットリスト数
・情報収集完了率
実行フェーズ・初期コンタクト
・ニーズヒアリング
・商談設定
・コンタクト数
・アポ獲得率

BDRの活動において最も重要なのは、準備フェーズでの徹底した市場分析とターゲット選定です。実行フェーズでは、収集した情報を基に効果的なアプローチを行い、具体的な商談機会の創出につなげます。各フェーズでKPIを設定し、定期的なモニタリングと改善を行うことで、組織全体のパフォーマンス向上を実現することができます。

SDRの場合

インバウンド営業を担当するSDRは、マーケティングチームと連携しながら、質の高いリードを効率的に商談化することが求められます。THE MODEL式のアプローチを基本としながら、以下のようなプロセスで対応を進めていきます。

フェーズ具体的なアクションKPI
準備フェーズ・リードスコアリング
・優先順位付け
・マーケティング施策の理解
・リード評価完了率
・リード選定精度
・スコアリング精度
実行フェーズ・リードへの初期コンタクト
・ニーズ確認
・商談設定
・初期レスポンス時間
・コンバージョン率
・商談設定率

SDRの活動成功の鍵は、マーケティングから獲得したリードに対する迅速かつ的確な対応にあります。リード選定では明確な基準に基づくスコアリングを行い、初期対応ではスピーディーなコンタクトとニーズの深掘りを実施します。このプロセスを継続的に最適化することで、質の高い商談創出と成約率の向上につなげることができます。

【ステップ②】営業戦略策定

営業戦略とは、組織の目標達成に向けた中長期的な活動方針を示すものです。効果的な戦略策定には、市場環境の分析や自社の強み、そしてターゲット顧客の特性を深く理解することが不可欠となります。 戦略策定のプロセスにおいて、まず重要となるのが目的の明確化です。単なる売上目標の達成だけではなく、市場でのポジショニングや顧客価値の提供など、多角的な視点での目標設定が必要となります。

【ポイント①】定量的目標

  • 売上高
  • 顧客数
  • 商談成約率
  • 顧客維持率

また、成果物としてSWOT分析レポート・戦略目標書・戦略計画書などもあるとよいでしょう。

【ステップ③】メンバーアサイン

営業組織の成果を左右する重要な要素として、適材適所のメンバーアサインがあります。単に営業経験の有無だけでなく、各役割に求められる適性や能力を明確にし、組織全体としての最適化を図ることが重要です。

役割求められる適性
BDR・主体性とチャレンジ精神
・高いコミュニケーション力
・論理的思考力
SDR・傾聴力と分析力
・顧客志向の姿勢
・提案力

メンバーアサインでは、BDRには新規開拓への意欲と主体性を重視し、SDRには傾聴力と分析力を重視します。両者ともコミュニケーション能力は必須ですが、その方向性は異なり、BDRは能動的な働きかけ、SDRは顧客ニーズの理解と的確な提案力が求められます。適性を見極めた上で適切な役割へ配置することで、組織全体のパフォーマンスが向上します。

【ステップ④】営業ツール整備

営業活動の効率化と品質向上には、適切なツールの選定と活用が欠かせません。導入する際は、組織の規模や業務プロセスとの整合性を十分に検討する必要があります。

営業ツールの選定では、単なる機能の豊富さだけでなく、実際の業務プロセスとの適合性や使いやすさを重視する必要があります。特にSFA/CRMは営業活動の基盤となるため、カスタマイズ性と他ツールとの連携性を十分に検討した上で導入するかどうかを判断しましょう。また、導入後の定着化と活用促進のため、段階的な展開とユーザートレーニングの実施が重要となります。

運用準備段階のTodo

組織の基盤が整ったら、次は実際の運用に向けた準備段階に入ります。この4つの段階では、継続的な成果創出のための仕組みづくりと、組織の持続的な成長を支える体制の構築が重要になります。

【ステップ①】評価制度設計

評価制度は、組織のパフォーマンスと個人の成長を促進する重要な仕組みです。適切な評価指標の設定と、公平な評価プロセスの確立が求められます。

評価項目評価指標例目標設定の基準
定量評価・新規商談数
・成約率
・売上達成率
・市場環境
・過去実績
・組織目標
定性評価・提案品質
・チーム貢献度
・スキル向上
・役割期待
・キャリアステージ
・組織ニーズ

評価制度は、業績や貢献度を総合的に把握し、個々の成長を支援するために不可欠です。定量評価では数値的な達成度を基にし、定性評価では姿勢や成長過程を重視します。組織全体の目標に沿った適切な指標設定が重要となります。

【ステップ②】MTG・アジェンダ設計

効果的なミーティング体制は、組織の方向性統一と課題解決の場として機能します。目的に応じた適切な頻度と内容設計が重要です。

MTG種別目的頻度
全体MTG・方針共有
・実績確認
・課題共有
週1回
1on1・個別課題対応
・育成支援
・モチベーション管理
週1回/隔週

効果的なミーティングは、組織内の情報共有と課題解決を促進します。全体MTGでは、戦略や進捗を確認し、共通認識を持つことが大切です。一方、1on1は個別の成長支援や問題解決を目的とし、より密接なコミュニケーションを図る場となります。

【ステップ③】PDCA運用設計

PDCAサイクルの確立は、営業組織の継続的な改善と成長を支える重要な基盤となります。効果的なPDCAサイクルの運用には、各フェーズでの具体的なアクションと責任の所在を明確にすることが求められます。

PDCA実施頻度具体的なアクション
Plan四半期/月次・数値目標の設定
・アクションプランの策定
・リソース配分の決定
Do日次/週次・営業活動の実施
・進捗データの記録
・問題点の記録
Check週次/月次・KPI達成度確認
・プロセス評価
・阻害要因分析
Action月次/四半期・対策の具体化
・実行計画の策定
・水平展開の検討

PDCAサイクルは営業組織の成長を支える仕組みであり、各フェーズでの具体的なアクションが成功に繋がります。目標設定や戦略立案をしっかり行い、日々の活動をデータで確認・分析することで、改善策を明確にし、次のステップに活かします。

【ステップ④】メンバーへの研修実施

効果的な研修プログラムは、組織全体の営業力向上と標準化に不可欠です。体系的な研修設計と継続的な実施が、組織の成長を支えます。

PDCA実施項目実施頻度具体的なアクション
Plan・目標設定
・戦略立案
・KPI設定
四半期/月次・数値目標の設定
・アクションプランの策定
・リソース配分の決定
Do・日常活動
・戦略実行
・データ収集
日次/週次・営業活動の実施
・進捗データの記録
・問題点の記録
Check・実績分析
・課題抽出
・原因特定
週次/月次・KPI達成度確認
・プロセス評価
・阻害要因分析
Action・改善策立案
・プロセス修正
・展開計画
月次/四半期・対策の具体化
・実行計画の策定
・水平展開の検討

研修プログラムは、組織の営業力向上と標準化に重要な役割を果たします。新規メンバーには基礎的なスキルと業務理解を深めさせ、全メンバーには高い提案力や交渉力を養います。管理職候補向けには、組織運営やチーム育成を強化し、将来のリーダー育成を目指します。

営業組織の立ち上げで徹底するべきポイント

ここまで営業組織を立ち上げるため組織体制やTODOを解説しましたが、各要素を効果的に機能させるためには、以下の重要ポイントを徹底する必要があります。

  • モチベーション管理
  • ナレッジ共有の仕組化
  • 数値ベースで結果を管理
  • SFA/CRMツールの活用
  • 網羅的な研修設計

モチベーション管理

営業組織のパフォーマンスは、メンバーのモチベーションと密接に関連します。持続的な成果創出には、適切なモチベーション管理の仕組みが不可欠です。

施策カテゴリー具体的な施策
評価・報酬・インセンティブ制度
・表彰制度
・昇進機会
成長支援・スキル開発機会
・メンター制度
・キャリアパス

営業組織のモチベーション管理では、評価・報酬と成長支援の両輪をバランスよく回すことが重要です。評価・報酬面では、月間MVP制度や四半期ごとの表彰など、短期的な成果認定と、年間を通じた昇進・昇格などの長期的なキャリアパスを組み合わせます。特に、数値目標の達成度だけでなく、プロセスの質や組織への貢献度も評価基準に含めることで、より公平で納得感のある評価が実現できます。成長支援においては、個人の強みや課題に応じたカスタマイズされた育成プランを設計し、定期的な面談を通じて進捗を確認していきます。

ナレッジ共有の仕組化

営業ノウハウの共有と活用は、組織全体の競争力向上につながります。効果的なナレッジマネジメントシステムの構築が重要です。

共有項目運用方法管理ツール
商談事例・成功/失敗事例の共有
・ベストプラクティス化
・定期的な振り返り
・SFA/CRM
・ナレッジベース
・共有フォルダ
提案資料・テンプレート化
・業種別整理
・効果測定
・資料管理システム
・プレゼンツール

ナレッジ共有を成功させるカギは、「入力のしやすさ」と「検索のしやすさ」のバランスです。例えば、商談事例の共有では、案件概要、成功/失敗要因、次回への教訓など、必要最小限の項目を定型フォーマット化することで、入力の手間を減らしつつ、質の高い情報蓄積が可能になります。また、週次の営業会議で優良事例を共有したり、月次でベストプラクティスをまとめ直したりすることで、単なるデータベースではなく、生きた知識として組織に定着させることができます。

数値ベースで結果を管理

データに基づく営業管理は、客観的な評価と改善を可能にします。適切な指標設定と分析体制の構築が必要です。

管理指標測定項目分析ポイント
活動指標・商談数
・提案数
・フォロー率
・トレンド分析
・目標達成度
・効率性評価
成果指標・成約率
・平均単価
・顧客満足度
・要因分析
・相関関係
・改善機会特定

数値による管理では、インプット指標(活動量)とアウトプット指標(成果)を適切に組み合わせることが重要です。例えば、商談件数や提案件数といった活動指標と、受注率や顧客満足度といった成果指標を並行して管理します。ただし、数値の追跡だけでなく、定期的な分析会議を設け、数字の背景にある要因を深堀りすることで、実効性のある改善策を導き出すことができます。特に、好調な営業担当者の行動分析から成功パターンを抽出し、組織全体で共有することが有効です。

SFA/CRMツールの活用

営業活動の可視化と効率化には、適切なツール活用が不可欠です。SFA/CRMを導入するだけでなく、組織に定着させることが重要です。

活用領域主要機能
案件管理・商談進捗管理
・確度評価
・行動履歴記録
顧客管理・顧客情報集約
・接触履歴管理
・ニーズ分析

SFA/CRMの効果的活用では、案件管理と顧客管理の2つの領域で戦略的な運用が必要です。 案件管理においては、商談進捗、確度評価、行動履歴の記録を徹底します。30分以内の入力や週次での確度見直しなど、具体的なルールを設けることで、進捗の透明化や予測精度の向上を実現します。 一方、顧客管理では、基本情報の集約に加え、接触履歴の管理やニーズ分析が重要です。決裁者の異動や組織変更といった重要な変化点は確実に記録し、適切なセキュリティ管理のもと情報を活用します。 こうしたツール活用を促進するには、単なるデータ入力ではなく、顧客との関係強化や機会創出につながる重要な活動として位置づけ、具体的な成果に結びつけることが大切です。

網羅的な研修設計

営業力強化には、計画的な人材育成が重要です。段階的な研修プログラムの設計と実施が求められます。

研修レベル対象者習得スキル実施形式
新人基礎入社1年目・商品知識
・業界理解
・営業基本動作
・ビジネスマナー
・集合研修
・OJT
・オンライン学習
・メンタリング
若手実践入社2-3年目・提案構築力
・商談進行力
・競合分析力
・価格交渉力
・ケーススタディ
・実地研修
・グループワーク
・個別コーチング
中堅専門入社4-7年目・戦略的思考
・業界専門知識
・プロジェクト管理
・ソリューション提案
・専門講座
・実践演習
・外部セミナー
・相互研修
管理職課長級以上・チームマネジメント
・戦略立案
・組織開発
・リスク管理
・マネジメント研修
・ワークショップ
・ケースメソッド
・経営塾

営業組織における専門的な研修は、提案力、交渉力、業界知識の3つを柱として体系化されています。提案力では、ニーズ分析から提案書作成、ROI算出までを実践的なワークを通じて習得し、案件の採用率向上と大型化を目指します。交渉力は、Win-Win交渉やクロージング手法をロールプレイで徹底的に練習し、成約率と利益率の改善につなげましょう。業界知識については、外部講師による最新動向の解説や実践的な市場調査を通じて、提案品質と商談スピードの向上を図ります。

まとめ

営業組織の立ち上げには、明確な戦略と綿密な計画が欠かせません。組織の設計から人材の選定、目標設定まで、段階ごとに必要なアクションを実行していくことが成功への鍵となります。

弊社株式会社Sales and Innovation Japanでは、これまで200社以上の営業支援、マーケティング支援を実施してきた経験を活かして、企業様の新規事業立ち上げや販路拡大のご支援をさせていただいております。

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