企業が新規事業を立ち上げる重要性、成功するためのプロセス・フレームワークを紹介

新事業の立ち上げは企業にさらなる売上・規模拡大や優秀な人材の育成も実現することができるチャンスです。時にはターニングポイントにもなり得るでしょう。しかし同時に新事業の立ち上げにつまずいたり、立ち上げ後の営業に難しさを感じたりするケースも少なくありません。

この記事では新事業の立ち上げを成功させるためのポイントを解説します。便利なフレームワークやサービスも紹介するので参考にしてみてください。

企業にとって新規事業の立ち上げは非常に重要

企業にとって新規事業の立ち上げは、その企業の今後の展望を計るうえで非常に重要です。新規事業を立ち上げる理由・メリットは以下の点が挙げられます。詳しく見ていきましょう。

理由1:外部環境の変化に対応するため

マーケットの状況はテクノロジーの発達・政治的要因・企業取り巻く環境や国際情勢・需要と供給などの要因によって目まぐるしく変化しています。インターネット・スマートフォンの普及はその一例です。

昨今の例でいえばAI(人工知能)の発達が挙げられます。また正に現在進行形で起こっている事象としては新型コロナウィルス感染症の拡大が挙げられるでしょう。コロナウィルス感染拡大によりさまざまなビジネスの様相が変化し、今なお進行の過程にあるのは実感できるのではないでしょうか。

数十年前よりも時代の変化が早くなった今、企業はそういった刻一刻と変化する市場の状況に適宜対応していくことが求められます。

理由2:人材育成につながるため

新規事業の立ち上げは企業の存続・持続を図るためにも行われます。同様に企業の発展に大きく寄与するものの一つが人材育成といえるでしょう。そして新規事業の立ち上げはこの人材育成を促進するきっかけとなります。

新たなことにチャレンジするということは、換言すればコスト・時間などにおいてリスクを取る、いわば投資といえるでしょう。したがって新規事業の立ち上げにはマーケットの事前調査・アイデアの試行錯誤・事業計画・設備投資などさまざまな要素が組み込まれています。

そういったプロセスを経て新規事業立ち上げに関わる社員はさらなる成長することが期待できます。

新規事業の立ち上げを成功させるステップとは

ここからは新規事業立ち上げにおける具体的なプロセスを紹介します。新規事業の立ち上げを成功させるには以下のステップを着実に実施することが重要です。詳しく見ていきましょう。

担当者を決定する

まずは専任の担当を決定することです。新規事業が成功している企業は一度専任担当を決めると、既存の事業から切り離し完全に新規事業に従事させています。これは既存の業務と新規事業開拓業務を同時に行うことで新規事業に取りかかる時間を割かれてしまうためです。

新規事業の立ち上げというのはそれぐらいの労力を必要とするということ、そして展開する事業内容と同様に誰がそれを行うのかが重要ともいえます。

新規事業の立ち上げはとても労力がかかり、責任の重い任務です。そのため担当を選ぶ際は社内から立候補制で選出するのがおすすめです。「新規事業の立ち上げを成功させたい」という自発的な気持ちを持つ社員を探してみましょう。

課題を見つける

課題というのは「顧客が何に困っているのか」「何が足りないのか」を見つけることです。自社がやりたいことを追求しても、市場の需要がなければ成功には程遠い結果となるでしょう。

自社のサービスにおいて、もしくは市場全体においてどのようなサービスが足りていないのかを調べ、お金を払ってでも今すぐその課題を解決したいと思えるような商品・サービスを提供することが新規事業成功の重要なポイントです。そしてそれを見つけることが、自社に必要な新規事業企画の最初のステップです。

なお、課題の大きさを考える時には「あったらいいな(Nice to have)」というレベルではなく「無くてはならない(Msut have)」というレベルに達しているかというのも重要なポイントとなります。

経営資源を分析し、事業ドメインを決める

課題を見つけたら次に行うのは「経済資源の分析」と「事業ドメイン」の決定です。

まずは自社の経済資源を分析しましょう。分析に用いるフレームワークとしては「PEST分析」や「SWOT分析」があります。フレームワークについては後ほど詳しく紹介するので、あわせてチェックすることをおすすめします。

事業ドメインとは企業が事業を展開する事業領域のことです。「誰に(サービスを提供する対象)」「何を(商品・サービス)」「どのように提供するのか(販売戦略)」を指します。事業ドメインは「物理的定義」と「機能的定義」の2つの視点から考えることができます。

物理的定義とは「新商品を提供する」「新サービスを提供する」「新しいソフトウェアを提供する」など具体的なものです。それに対して機能的定義とは「子どもを対象にする」「女性をターゲットにする」「企業をターゲットにする」など対象になるマーケットを指しています。

物理的定義は具体的にイメージしやすい反面事業規模拡大が難しくなるというデメリットがあり、機能的定義においてはその逆の要素を持っています。いずれもメリット・デメリットがありますから、事業展開を考慮し優位な方法で事業ドメインを決定することが重要です。

製品戦略を考える

経営資源を分析・事業ドメイン決定の次はいよいよ製品・サービス戦略を構築する段階です。製品戦略を考えるには「ペルソナ分析」などのフレームワークを用いるのが有効です。

ペルソナ分析は誰がそのサービスを必要とするのか対象とするマーケットを検討するのに使用します。こちらも後述するのであわせてご参考ください。

市場のリサーチを行う

新規事業立ち上げの際にフォーカスするのは「何を売るのか」「どのようにして売るのか」の製品・販売戦略だけではありません。同時に市場のリサーチが重要です。

市場のリサーチは、どれほどの需要があるのか、マーケットの規模はどれくらいなのか、といった要素である「市場性」と、ターゲットの特徴・事業に参入している競合他社といった要素である「事業性」の2つの観点を考慮する必要があります。

新規事業立ち上げを成功させるにはこの2つの要素において「優位な立場に立てる」という状況を作り出すことが必須といえます。

実現可能性を検証する

製品・サービスのコンセプト、販売戦略、マーケティングなど、戦略を緻密に立てても戦略通りに進むとは限りません。そのため、PoCでしっかりとコンセプトや機能が受け入れられるかどうかを検証しながら進めていくと良いでしょう。

PoC(Proof of Concept)とは、概念実証のことを指し、新しい技術、新たなアイデアやコンセプトの実現可能性やそれによって得られる効果などについて検証することです。

スタートアップの場合、PoCを通じて実際の費用対効果がどのくらいかを確認することができるため、戦略や研究(商品・サービス)開発などを確実に進めることが出来ます。

PoCや仮説検証の結果、想定していた課題が存在しない、あるいは解決できないとわかった場合は、計画を練り直します。なお、PoCは課題を見つけたタイミングで実施する場合もあれば、事業や製品の方向性がある程度固まってきてから実施するケースもあります。いずれにしても、大きな投資や意思決定を行う前に、事業の不確実性を少しでも排除していくことが重要です。

ヒト・モノ・カネ・情報を用意する

経営において重要な要素は「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」の4つであるといわれています。これは新規事業であっても同様です。

新規事業立ち上げにおける「ヒト」とは、新規事業プロジェクトを推進する人材・そのチームのことを指します。チーム内でそれぞれの役割分担を決め、バランスの取れたチームを構成することが重要です。人材が足りなければそれを補うために新たな人材の採用も必要となるでしょう。

「モノ」「情報」は必要なスキル・ノウハウのことです。練り上げたアイデア・製品戦略を具体的に形にする技術が必要です。自社で賄うことができればいいですが、新規の事業のアイデアによっては新たな分野に挑戦することにもなり得ます。自社に無いスキルが必要であれば新たに外注する必要もあるかもしれません。

「カネ」は設備投資や人件費などに必要な資金のことです。潤沢な資金があることに越したことはありません。必要に応じて融資を募る必要もあるでしょう。

上記のうちどれか一つでも欠けてしまうと新規事業の立ち上げは難しくなるでしょう。新規事業の立ち上げを成功させるためには、これらを揃えて製品・サービスの構築に必要な環境を作ることが求められます。

改善を繰り返しながら、運営する

製品・サービスのコンセプト、販売戦略、マーケティングなど全ての準備が整えばいよいよ運営開始、新事業のスタートです。しかしながらこれで完結ではありません。むしろ勝負はここからといえるでしょう。

新事業のスタートといってもまずは試作品・お試し段階のサービス提供となります。この段階で今までの計画がどれくらいうまくいくのか、どういった反響があるのかを元にプロダクト・サービスの見直しを行い、それを継続していきます。新規事業の成功にはこの「計画・実行・確認・改善」のPDCAサイクルを繰り返しながら運営していくことが重要です。

成功させるために入念に準備をしてから実行するというケースが見られますが、100%の準備をするのは不可能といえます。なぜなら何が100%なのかの定義ができないからです。もちろん前述したとおり入念な準備は必須ですが、100%準備してから運営するのではなく実践しながら改善していく判断も必要です。

新規事業の立ち上げに役立つフレームワークとは

フレームワークとは日本語で「枠組み」のことです。ある一定の枠組みを利用して物事を考えることでより効率的に問題を解決することができます。フレームワークにはいくつかの種類があります。それぞれのフレームワークの特徴や活用方法について詳しく見ていきましょう。

MVV

MVVとは「Mission(使命)・Vision(未来像)・Value(価値)」の略語です。その企業の基本的な企業理念としても用いられます。項目はそれぞれ以下のように定義できます。

·       Mission(使命):「企業や新規事業が果たすべき使命・目的」

·       Vision(未来像):「その企業・事業において目指すべき将来の姿」

·       Value(価値):「企業が重視するべき価値・行動模範」

これらの3つは企業理念とも共通することが想定されます。新事業の根幹ともなり得る部分ですから新事業計画における初めの段階でしっかりと決めていくようにしましょう。

SWOT分析

SWOT分析とは企業の内部環境と外部環境を分析するツールで、内部環境分析にあたるのが「Strength(強み)・Weakness(弱み)」、外部環境分析にあたるのが「Opportunity(機会)・Threat(脅威)」です。外部環境分析にはPEST分析で認識した要素を踏まえて分析します。

SWOT分析を用いることで、外部要因を認識し、自社の弱点を補い、長所をより活かした戦略を練ることができます。

VRIO分析

VRIOとは「Value(価値)・Rarity(希少性)・Inimitability(模倣困難性)・Organization(組織)」の略語でVRIO分析とはこの4つの観点から自社の経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を把握するために用いられます。

新規事業を展開する際に自社にどれくらいの価値や希少性があるのか、そのアイデアを実行するために十分な人材や技術力はあるのか、資金は十分に確保できるのかを判断することができます。

3C分析

3Cとは「Customer(顧客・市場)・Company(自社)・Competitor(競合他社)」のことで、3C分析とはそれぞれの視点から分析する方法です。

Customerの視点から「顧客のニーズ・市場規模・将来の展望」について分析、それに対する自社の強み・弱みを分析、最後に競合他社と比較し自社の優位性はどこなのか、どのように他社と差別化を図るのかなどを分析します。

ポジショニングマップ

ポジショニングマップとは対象のマーケットにおいて、各社のプロダクト・サービスがどの位置にあるのか、そしてそれに対して自社がどの位置にあるのかを図に表して明確にする分析方法です。

X軸・Y軸にそれぞれ異なる指標を書き出し、各社をそれぞれの位置にポジショニングします。この分析で重要なのはポジショニングの軸を定めることです。「コスト対サービス」や「価格対機能性」などの項目を用いるのが一般的です。

6W3H

5W1Hといえば「When(いつ)・Where(どこで)・Who(誰が)・What(何を)・Why(なぜ)・How(どうした)」でご存じの方も多いのではないでしょうか。6W3Hとはこれに1つのWとなる「Whom(誰に)」、2つのHとなる「How many(どれくらい)」「How much(いくらで)」を付け加えたものです。

抽象的なテーマや曖昧な情報を明確にするために用いられるフレームワークです。

ペルソナ分析

ペルソナ分析は製品戦略を考える際などに用いられるフレームワークです。ペルソナとは「年代・性別・職業・価値観」といった対象となる顧客の情報で、それを元に提供する製品やサービスのコンセプトを決めていきます。

例えば「30代・女性・会社員・趣味は旅行」などといった情報を元に「旅行好きの女性」をターゲットにしたサービスを展開するといった戦略を打ち出すことができます。

MVP

MVPとは「Minimum Viable Product」の略で、顧客に価値を提供できる必要最低限の機能を備えたプロダクト(商品)や、そのプロダクトを使ったアプローチのことを指します。

MVPの大きな目的は「仮説の検証」となります。

MVPを活用することで、新規事業のポテンシャルを低コスト・短期間で検証できるため、最小限のリスクで製品市場の必要性が検証でき、顧客のニーズに合わせた製品を提供しやすくなります。

新規事業開発や今後仕様が変更されそうな開発には最適となります。現状はどのように変えるか、具体的に決まっていないものの、修正・変更点が上がることが想定されている場合にはMVPを活用すると良いとされております。

デザインスプリント

デザインスプリントとは、課題解決のアイデアを短期間でテスト・検証するために使われるフレームワークです。5日間という制限時間の中で、連続したワークショップを通じ、アイデアを出し、試作品を作り、ユーザーテストを行い、その結果を元に意思決定することで、最短で最良の答えを導き出します。

デザインスプリントのメリットは、サービスアイデアのニーズ検証、及びプロトタイプを使った顧客体験の検証までを短期間で行えることです 「黄金メソッド」と言われるほど、大きい効果を期待できるフレームワークとして様々な企業で採用されているフレームワークとなります。

新規事業の立ち上げを成功させるポイントとは

新規事業の立ち上げにおける重要なポイントとして挙げられるのは、1つ目に「自社の強みを活かすための方法を考える」という点です。「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」といわれるように、自社にどういった強みがあるのかを知ることで自ずと足りないものも見えてくるでしょう。

2つ目は明確なビジョンを設定することです。新規事業を立ち上げても順風満帆に事が運ぶとは限りません。明確なビジョンを持つことで困難な状況に陥ってしまってもぶれずに確固たるスタンスを持ち続けることができます。

3つ目に重要なのは、社員のモチベーションを上げるために工夫を凝らすことです。先に述べたように新規事業立ち上げ後「なかなかうまくいかない」「収益につながらない」といったことはめずらしいことではありません。そんな状況でも社員のモチベーションをキープする仕組みが必要です。

そして最後に重要なのが具体的な戦略です。「入念な市場のリサーチはできているのか」「チームは無駄なく機能しているか」「参入するタイミングは計算されているか」など可能な限り準備しておきましょう。

まとめ

新規事業立ち上げは否応なしに気合が入ります。しかし気合が入るあまり勢いだけで押し切っては確実な成功は見込めません。

新しいビジネスを展開するにはそれ相応の労力・コストがかかります。つまり新規事業立ち上げは企業にとってはリスクを取るということでもあります。したがって成功させるには明確なビジョンを持って、フレームワークを用いた入念な分析が必要です。

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